お伽噺が聴こえる~異国迷路のクロワーゼ [comic]
まずは何よりその画力がずば抜けています。
キャラクターが愛らしいとかデッサンが上手いという作家さんはたくさんいますけど、
武田さんのカットはただ細かいところまで描きこまれたということに留まらず、
物語りの舞台となった世界の空気までを感じさせ、それ単体でもどこか物語性を感じさせます。
下手な画集を買うよりもよっぽどお得です。
ストーリーテリングの手法にはこったところは無いのですが、表現されているものが
シンプルなだけにその解釈にはいくつもの可能性が秘められています。
さてこの物語りの根底には「不思議の国のアリス」を感じます。
19世紀後半に長崎から一人フランスにやってきた少女“湯音(ユネ)”
舞台となるのはガラス張りのアーケード、ギャルリ・ド・ロワ。
木と紙の国から来た少女はこの石と硝子の迷宮で様々なものごとに出会います。
それは日本とフランスの文化の違いであったり、富めるものであったり貧しいものであったり
そして少年と少女の心の交流であったり。
様々なものがその美麗なカットの中に潜んでいます。
普通のまんがのように読んでしまうのももちろんアリですが、このカットをひとつひとつ
味わうように観ると絵本を楽しんでいたあの懐かしい時間を感じられますヨ!
また「~クロワーゼ」が西洋のお伽噺とすれば、こちらは日本の昔話です。
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